クシュカ語 語彙集(2004年3月改訂版:今後も随時改訂予定)
© 1999-2004, 2009 Sinjow Kazma
(この語彙集の無断転載、転用を禁じます……というか、転用法に興味があるので、その折にはメールやツイッタのつぶやき等で一言御連絡いただければ、基本OKしますんで:将来的にはクリエイティブ・コモンズのby-nc-saあたりにしようかと思ってます)
a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z
< ……語源
* ……推定される古語、祖語
←→ ……関連するクシュカ語の単語
→ ……関連すると思われる他言語の単語
復元・再構築されたクシュカ語の語根は、大文字のアルファベットで示される
例)LAU、SAU、SEL
- abaluin{動:アバルーイン <a-bal-uin}
- 1. 美しくする。
- 2. 誉める。誉め讃える。
- agn{前置、接頭:アグン ……直後に無声音(清音)がきた場合はang-となり、有声音(濁音)がくるとan-となるが、例外としてagn+n->agn-、agn-+k->ank-、agn+kn->ang-がある:→ラテン諸語un-、non-}
- 1. 動詞語幹に先行して否定や反対の意味をあらわす:「〜しない」「〜ではない」
- 2. 名詞に接続して否定や反対の意味をあらわす:「非〜」「反〜」
- Agna{固有:アグナ <agn-}
- 1. イスキュア神話における英雄、【天界十騎Us^kvanu】の一。原義「否定する者、しりぞける者」。【アクシャーザ】の供として、常に一行のしんがりをつとめる。長身で寡黙にして、あらゆる事について懐疑的態度をとる。【ホズナシュ】の従兄。
- agnin{動:アグニン ←→【agn-】、【gna_lin】、【gnin】}
- 1. 〜をしない。やらない、おこなわない。
- 2. (agn+【nin】から)持たない。触れない。
- 3. 〜とならない、〜にならない。
- agvry`{名:アグヴーユ <agbry`<agmbry` ←→【ambrey`】、【ambrunau】}
- 1. 屍鬼。【Vilgna女神】の眷属の一。イスキュア神話において、死期の迫った者の天幕の外に集い、またその周囲を疾駆して、死者を食らわんとするが決して果たせない妖怪。
- -ah-{接尾辞:アフ ←→*aku-?}
- 1. 動詞語幹の後について、使役をあらわす:「〜させる」。
- 例)knissin. 「彼は目覚める」
- knissahin us^kei. 「彼は馬たちを目覚めさせる」
- ahl{名:アフル <*hlm-}
- 1. 天。天空。
- 2. 星空。夜空。
- 3. 柱の突端。
- 4. 天蓋。
- ahva{名:アフヴァ <【ahvin】}
- 1. 続き。継続。
- aida{名:アイダ <【aidin】}
- 1. 続き。
- 2. 延長。突端。
- 3. (古)鏃。槍の穂先。
- aikhday`{名:アイクダーユ <【aikhin】}
- 1. 王の行政の代行者。執事。執権。
- aiklin{動:アイクリン <ai-}
- 1. 遅れる。
- 2. あとに付き従う。←→対義語【akuin】を参照。
- aive{副:アイヴェ <ai-}
- 1. 常に。いつも。
- 2. 永きにわたって。
- aiza{名:アイザ <【aizav】}
- 1. 長さ。丈。
- 2. 距離。
- 3. 長さの単位:約180センチメートル。
- aizav{形:アイザヴ <【aizin】}
- 1. 長い。
- Ajankhuy`{固有:アジャンフーユ <*ajana「激情<生贄の心臓」+*heye-「巨人、巨体、長身」}
- 1. イスキュア神話における【ジェッサ誓約氏族】の女戦士。【アヴジェズルAvjezl】の長女、【アグナ】の母。母親似の巨躯で、十尺を超えてさらに育ったという。怪力の持ち主としても知られる。
- akhtay`{名:アハターユ、アクターユ <反実法三人称過去-akhta}
- 1. 神仏など人智を超えた諸存在の総称:「かくありしかとも思われる者」。イスキュア神話哲学において神仏天仙とは非線形時空に住まう存在として、常に「そうはならなかったが、そうなったかもしれなかった過去/未来」を内包していると見なされる。これに対して人間や神獣など単に悟性を有する者は「過去と現在は認識できるが、未来を含む非在の時空を獲得・内包できない」存在、すなわち【認識者zay`】に分類される。
- akhva As^zaudunen{固有:アクヴァ・アシュザウドゥーネン}
- 1. (仏典)釈迦世界。中央に須弥山を、天空に日輪月輪を有し、四方には四大陸が位置する方形の世界。転輪乗経典では頂上までの高さ一千億里に及ぶ一本の角柱として描写される。現代天文学においては球形の惑星を含む複数の天体からなる系と解釈されている。
- Aks^a_aza{固有:アクシャーザ <*aks-iau-s-<KES+YAW+SE「萎え脚で(膝を曲げて)戻ってくる者」 ←→【kis^】、【zau】}
- 1. {固有名詞)イスキュア神話において活躍する天の射手。三千世界を横断して転輪聖王の住まう〈不死の塔〉【スカウズ】を目指したが至らず、〈黄金の月〉を持ち帰ったという。
- aksuin{動:アクスーイン <iksuwin<i+kis^+orruin}
- →【aks^win】に同じ。
- akwin{動:アクウィン <【kin】+他動詞強調の接辞i/a-rwin<Ke}
- 1. (家畜を)動かす。
- 2. 遊牧する。旅をする。
- 3. 強いる。強制する。
- alma{名:アルマ <ALEM}
- 1. 鷹。とくに狩猟に用いられる鷹。
- 2. フクロウ。
- alu_da{名:アルーダ <*ay'-}
- 1. 時代、歳月。皇帝の治世。
- ※例)alu_da Arriazamnen 「アリアザーン帝の治世」
- alu_dien Barragne_lien 「バラグネーユ(が支配した)時代の〜」
- 2. 在任期間。任期。
- 3. 帝国に服属している諸王の統治期間。また、その間の出来事。
- amav{形:アマヴ <*ama-}
- 1. 右の。右側の。
- 2. 優位な。優勢な。
- ambrey`{名:アンブレーユ <agmbry`<【agn-】+*mbr- ←→【agvry`】、【ambrunau】}
- 1. 不死者:原義「死に在らざる者、死に似ざる者」。
- 2. (雅)黄金。
- 3. (雅)【神聖霊液ユルサーグナ】。
- ambrunau{名:アンブルーナウ ←→【ambrey`】、【agvry`】}
- 1. 転輪経典に語られる、不死の氏族:原義「黄金を持ち続ける者」。記憶の術に優れ、あらゆる事を忘れずにいるがその代償として人の生き血で喉をうるおす定めを負う。「パーンドゥシュの裁き」の後に【帝都アシュナ】にあらわれ、【ウルゴン河】の北岸に居住を許された。
- anas^{名:アナシュ、アーナシュ <*agna-}
- 1. 無。否定。虚無。
- 2. (仏典)サンスクリット語から輸入した「空」s^unaghaのクシュカ語訳。
- anguin{動:アングイン <*ang- →ラテン語angere「絞める、絞め殺す」}
- 1. 縛り付ける。
- 2. 足止めをさせて他の者よりも遅らせる。
- Anpharruz{固有:アンファルーズ}
- 1. イスキュア神話における英雄の一。【天界十騎Us^kvanu】の一人で、【ヴァラドゥーズ】の長男。長く美しい黒髪と詩才によって知られる。
- anuya{名:アヌーヤ <【agn-】}
- 1. 非存在、不在 。
- 2. 欠如 。
- 3. 無 。
- apeluin{動:アペルーイン <i-*pela-uin}
- 1. 繰り返す。
- 2. (雅)髪を幾重にも巻く。絡ませる。
- 3. 螺旋状にする。
- arhau{名:アルハウ <【arhin】}
- 1. (馬による)旅、旅行。
- arha_y'{名:アルハーユ <【arhin】}
- 1. (騎馬による)旅行者。
- 2. 騎乗者。馬の乗り手。
- 3. 騎馬戦士。平騎士。
- 4. (雅)クシュカ帝国の臣民。
- arhin{動:アルヒン <*akh-<AKh「(上への)積み重ね、積分」 →【akhva】【Mazakh】【akh】を参照}
- 1. 馬に乗る、またがる。
- 2. (馬で)旅をする。
- 3. (馬などを)御する。
- arkh{名:アルク、アウク <*aur-}
- 1. 当歳馬。
- armm{名:アルム <【arhemm】}
- 1. 鞍。
- 2. 背もたれのない椅子。
- 3. (転)座る場所。
- 4. (雅)住居、寓居。家。
- Arriazann{固有:アリアザーン}
- 1. クシュカ帝国の第六代皇帝(女帝)。原意「宝玉の君」「璧帝」。
- arska{名:アウスカ <【arsin】}
- 1. 若さ。
- arwin{動:アルウィン <【avin】の完了形a_rvinより}
- 1. 送る、送り出す。
- 2. 運ぶ、届ける。
- 3. 贈る。贈与する。
- 4. (古)失う。喪失する。
- -as^{接尾:アシュ、アーシュ <【tas^】
- 1. 一地方、領域、封土を意味する接尾辞:「〜の地」「〜地方」「〜国」。
- 2. 生国、故郷。
- as^kazay`{名:アシュカザーユ}
- 1. 商人。
- 2. (雅)人。人間。 →類義語【as^tnavay`】、【as^tvakhay`】も参照。
- askheva{名:アスケヴァ、アスヘヴァ <【askhin】}
- 1. 織物、とくに精巧な模様で飾られたもの。
- 2. タペストリ。
- asku_in{動:アスクーイン <【asku_z】}
- 1. 夢を見る。
- 2. 微睡む。うとうとする。
- askuz{名:アスクーズ <aus+*kis ←→類義語【vnakiy`】を参照}
- 1. 夢、またその中で発見・確認された情報や物件。
- as^luz{名:アシュルーズ <as^+【luz】}
- 1. 輪唱。
- asna{名:アスナ <*asn-}
- 1. 距離。
- 2. (古)歩幅。一跨ぎ。
- as^na{名:アシュナ}
- 1. 十字路。
- 2. 十文字。十字形。
- 3. 交点。座標軸の原点。
- 4. (天文)黄道と★天球子午線が交差する天上の位置。
- As^na{固有:アシュナ}
- 1. トランス=ソグディアナの北方に存在した古代遊牧帝国の首都。東方においては阿須奈(あすな)国として知られる伝説上の都。転輪乗経典には多くの異称が記されており、そのうち最も有名なものは「無数の名を持つ都(直訳:自身よりも多い名を有する処)」であるとされる。アシュナは「大地に礎をもたず天空へ垂直に架かって」いるが、一年に二度「大湖のほとりに降り立ち、四方の神門を開いて地上の牧民が来訪するを許した」という。
- 同じく経典によれば、「最初の人の王」ウルンクーヴァUlnkuvaの次女であるヒアンカHiankaが〈黄金の月〉を用い、一夜にしてアシュナを建立した。その壮麗な姿は「一辺三千里の方形にして、各辺は東西南北に面して大門が置かれ、都市の中央には円筒型の内裏が聳えること一万丈、内裏を囲む四百の尖塔より四つの河が流れ出て、その水はあらゆる街区を慈悲の光で満たした」と伝えられる。
- asnavin{動:アスナーヴィン}
- 1. 蒔く。
- 2. 撒く。撒き散らす。
- 3. 散逸する。
- asnin{動:アスニン <*asn-<*zn-}
- 1. 一定の幅で歩く。
- 2. 測る。
- 3. 識る。理解する。推し量る。 →類義語【skuin】が静止による抽象的思考を暗示するのに対して、asninは運動→による実測→による具体把握を意味する。対義語【zna_khin】も参照。
- aspey`{名:アスペーユ <*saupe- →サンスクリット語sarpati「這い寄る」、ギリシャ語herpein「這い寄る」、ラテン語sepere「這い寄る」}
- 1. 蛇、水蛇。
- 2. 脚を持たない神、「這い寄る神」。
- 3. (俗)おもいがけない幸運。
- As^tekuva{固有:アシュテクーヴァ}
- 1. イスキュア神話における薬師如来の別名。
- As^umey`{固有:アシュメーユ <as^「場所」+*ummey`「不動の清浄」}
- 1. イスキュア神話における女祈祷師。【アヴジェズル】の次女。息子の【ホズナシュ】と甥の【アグナ】が【ナーユ天女】との天界戦争に出陣する際、あらゆる矢を跳ね返す盾を前者に、あらゆる敵を射抜く弓矢を後者に与えた。
- atuwin{動:アトゥーウィン <i-*tur-uin}
- 1. 巻き込む。
- 2. 自転する。軸を有する。
- atvay`{名:アトヴァーユ}
- 1. 遊牧民。牧民。
- 2. クシュカ帝国における平民層。財産を持ち、季節的移動ができ、貴族の指揮のもと戦争と略奪に参加する資格を有する。集合名詞はアトヴァーヌatvanuまたはアトヴェルatvel。
- audin{動:アウディン}
- 1. 防ぐ。妨げる。
- 2. 覆う。
- 3. (虫や獣が)外皮を硬くする。
- 4. (3の転用)態度を硬化する。頑なになる。誓約を拒否する。
- 5. (語源の誤釈aus+dinと4の混同から)交流を避ける。隠棲する。「(自らを)彼方へ置く」。
- aus{前置:アウス <?*essa- ←→es^lin、za}
- 1. 対格に先行して最上部の位置をあらわす:「〜の上の、〜の頂上の」。
- 2. 奪格に先行して、対象を超えた位置をあらわす:「〜の向こうの、〜の果ての」。
- 注釈……tva<*tav-が平面的直線的移動による外部への転移をあらわすのに対してaus<*essa-は垂直的・放物線的移動のニュアンスがある。たとえば、
- 例)「彼は森を抜けて川へむかった」tva sugnai sarrad edan.
- 「鷲たちが山を越えて飛んだ」 ausmugnag lhay`n salvande.
- という風にそれぞれ用いられる。
- Avanday`{固有:アヴァンダーユ <aven-na_y'「水天女」の音便}
- 1. イスキュア神話における神格の一。主にスーユナ大湖(現在のアラル海)に棲んで漁猟を統べる女神の一群。
- avlav{形:アヴラウ <*vil- →古高地ゲルマン語wildi、ウェールズ語gwyllt「野生の」}
- 1. 走り回る、疾走する。
- 2. 毛皮の、毛の生えた。
- 3. 野生の、自然の、飼い慣らされていない。
- ayavnay`{固有:アヤヴナーユ <ayau}
- 1. イスキュア神話において、【磊江ヴラウゾン】の上流に棲みついていたとされる天女。ヴラウゾン付け替えに際して故地を離れることを拒み、アシュナーズル女帝の命令によって斬首された。その怨念は【帝都アシュナ】の内裏の北西辺にとどまり、訪れる転輪僧に対して帝国崩壊の日を予言したという。
- Ay`zman{固有:アユズマン、アユズマーン}
- 1. イスキュア神話において、【神聖霊液ユルサーグナ】を生ずるという霊峰。東方へ伝わった転輪乗経典においては「纐纈山」「纐纈峡」などと表記される。
- azokh{形:アゾク}
- 1. 素手の。
- 2. 裸の、覆いのない。
- 3. 道具を用いない。
- azr{名:アズル、アズウ →サンスクリット語as'ra、古ノルディック語a`sa、アラビア語j`ini}
- 1. 悪鬼、羅刹:「素手で歩く者」。
- 2. イスキュア神話において、【宇宙侵入神クルシュ】の先触れとしてこの宇宙に忍び込むとされる異神異仏の類。
- 3. (転用)無宿者。
- ba-、bar-{接頭:バ、バル <BER}
- 1. 空間的先行をあらわす:「〜の前の、前面の、に先行する」。
- 2. 時間的先行をあらわす:「〜より以前の、より昔の」。
- 3. 準備や予備的行為をあらわす:「あらかじめ、前もって」。
- bakha{名:バッハ <bakh<*bek}
- 1. 高原。ステップ地帯。
- 2. 放牧に適した土地。
- 3. (古)高原へ至る、傾斜のある土地や道。「美しききざはしの地」。→【ba_la】、【ballo】も参照のこと。
- 4. (古)騎馬戦闘。主に平原・高原で行われる一斉攻撃。→類似の意味変化をおこした【egna】〜【egnau】も参照。
- ba_la{名:バーラ <ba_l-<*balal-<MPeLeL}
- 1. 門、とくに城門。
- 2. {固有名詞、複数:BalalnuバラルヌまたはBala_nuバラーヌ)クシュカ帝国の首都【アシュナ】にあったとされる四つの門、またその門を守る四柱の【ナーユ天女na_y'】の俗称。
- Bala-i-Nu_s^en{固有:バラ=イ=ヌーシェン}
- 1. 「夜の涯の門」:Bala-akh-Tauzen-i-Nus^en。イスキュア神話において【帝都アシュナ】の上方一千億里に位置するという天空大門。【ナナン=ズィル菩薩神】はこれを封ずるために、【宇宙侵入神フルシュ】を欺いて転輪乗経典を記させたとされる。
- balos^{名:バロシュ}
- 1. 美。美しさ。
- Baluzon{固有:バルゾン <【bala】+【-zon】:「大いなる門」}
- 1. 帝都【アシュナ】の南に位置する門。牧民が都を訪れる際には、必ずこの門をくぐると定められていた。クシュカ三大叙事詩の一つ『三王子の歌Darkiajenlu_z』の掉尾を飾る【ラーヤズル】軍と【ソルーズ】軍との衝突は、この門の前でおこなわれた。
- barza{名:バルザ <*bard- →サンスクリット語br`hant「高い」、古英語barrow「山、塚」}
- 1. 高み。
- 2. 頂き、頂点。
- barzin{動:バルズィン <【barza】}
- 1. 頂点に至る。到達する。
- 2. (技芸などを)きわめる。
- bask{名:バスク <BAS}
- 1. 獣、大型四脚獣。
- bas^tu_in{動:バシュトゥーイン ←→類義語【gnin】}
- 1. 底を尽く。(貯蔵物が、現象の結果として)無くなる。
- 2. 空になる。失われる。
- bauda{名:バウダ <【baudin】}
- 1. 死。落命、絶命。
- 2. (俗)墜落による死。
- baudin{動:バウディン <【bau】}
- 1. 死ぬ。落命する。
- 2. (古)先走る。馬群の先頭を往く。
- 3. (俗)落馬する。
- ba_vkin{動:バーヴキン <【bau-】+OwKU}
- 1. 予知する。予見する。
- 2. 予測する。
- 3. (天候の変化を)読みとる。
- beiru_nn{名:ベイルーン <【beirrin】}
- 1. 歩哨。見張り番。→【sky'a】、【uzma_nn】を参照。
- 2. 巡検士。
- Beizl{固有:ベイズル <*bey-+女性人名語尾-zl<形容語幹*belel-<MPeLeL「内部または表面への保護、加護」 →関連語彙【ba_la】【ballo】を参照}
- 1. クシュカ帝国における近衛女騎士団:「盾の乙女」。皇帝(女帝)を護るために、女性のみで構成された七つの騎士団(の構成員)。【Zavgana】、【Kizavna】とも称される。【ヴィルグナ女神Vilgna】を守護神と奉じ、皇帝の身体を護るためには「百たび骸となるをも辞さず」と誓った。
- ベイズルの騎士団は昴(プレアデス星団)を旗印に定め、転輪経典によれば「昴宿の深淵に本陣を構えた」という。【天空遊行】の技は有しないが、皇帝の勅許によって特別に「小千世界の黄金を恣にする」権限が与えられた。
- ben{副、前置:ベン <BE}
- 1. 彼方に、彼方で。
- 2. 対格に先行して、外部性や隔絶性をあらわす:「〜の彼方に、彼方で」「〜の遙か遠くに、遠くで」。【aus】が越境可能な垂直的経路を示すのに対して、benは物理的には到達不可能な経路を暗示する。
- 例)aus akhvela_g salvaiz' sugna ballo nain.「塔の群れを越えて飛ぶと、美しい森を君は見いだすだろう。」
- ben silvelie nana_ sa_rrida_nn.「星ぼしの彼方に大河やあらむ。」
- Beon{固有:ベオン <BE}
- 1. イスキュア神話において、全宇宙を喰むとされる巨神獣。天の射手【アクシャーザ】と不死の塔【スカウズ】への道を賭けて戦い、彼に破れてのち仏道に帰依した。
- bes{前置、接頭:ベス <BE}
- 1. 名詞の対格に先行して、距離の間隔・関係の放棄などをあらわす:「〜を離れて、〜と異なって」。
- 2. 名詞の奪格に先行して、運動の逸脱などをあらわす:「〜から外れて、〜から逸れて」。
- 3. 名詞や動詞の頭について、1や2の意味を付加する。
- besna{名:ベスナ <【besnin】}
- 1. (仏典)悟り。正覚。
- bordin{動:ボルディン <*beor-}
- 1. 獣と化す。 →【borz】を参照。
- 2. 猛獣の如き働きをする。
- brey`{名:ブレーユ <*mbr-}
- 1. 死。死者。
- 2. (雅)運命。宿命。
- Dagna{固有:ダグナ}
- 1. 赤獣。イスキュア神話において南方剣山(ヒマラヤ山脈もしくはヒンズークシュ山脈と推定される)の頂きに巣くうという巨大獣。全長八十丈、人面獣身で人語を解し、全身赤毛、巨鳥の骨を食して十万年を生きるという。【疾駆鬼グザヴェルン(Gzaveln)】の天敵。
- dagu_y'{名:ダグーユ ←→【Dagna】と関連ありか}
- 1. 骸、死骸。
- 2. 屍体。
- dana{名:ダーナ <dagn-}
- 1. 裁き。裁定。
- danuin{動:ダヌーイン <danau}
- 1. 朱咒の法をおこなう。呪的防衛をおこなう。
- -day`/-dey`{接尾辞:ダーユ、デーユ <-din「〜と化する、にする」}
- 1. 動詞語幹について、行為者をあらわす:「〜する者」。←→【-oy`】を参照。
- diya{代:ディヤ}
- 1. 二人称複数の代名詞:「あなたたち」「きみたち」。属格はdiegh。
- ※注釈……クシュカ語代名詞の属格(-gh語尾を持つもの)は、古典クシュカ語=文語体においては別個の品詞(所有代名詞)として扱われたが、口語体や帝国の後期においてはそれまでの代名詞属格(-en/-ien語尾)に替わって用いられた。文語体の所有代名詞は、
- 単数 複数
- 1人称 uyagha uyegha
- 2人称 tagha diegha
- 3人称 ergha erregha
- irgha irregha
- hirgha hirregha
- となって、-av語尾の形容詞と同じ語尾変化をおこす。
- 例)
- 文語体(古典クシュカ語)
- s^auz erregha 「かの者たちの旗が」
- s^audai erreghu~m 「かの者たちの旗を」
- 口語体、後期クシュカ語文語体
- erregh s^auz 「彼らの旗が」
- erregh s^audai 「彼らの旗を」
- dru_k{名:ドゥルーク <DRU}
- 1. 武器、武具。
- 2. 武装。
- druno_vna{名:ドゥルノーヴナ <【dru_nin】}
- 1. 武威。
- 2. 力、威力。威徳。
- 3. 権力。権能。
- 4. 人徳。(指導者・指揮官としての)魅力。
- dru_s^{名:ドゥルーシュ <DRU}
- 1. 武器庫。
- 2. 武具や武装の備え。装備。
- Dukhvarra{固有:ドゥーフヴァーラ <*und-+akhva+ 【ry`z】?}
- 1. 地下他界。イスキュア神話における異界の一。 三千世界の最底辺に位置し、そこへ墜ちれば「【ナナン=ズィル菩薩神】の慈悲光でさえ還ること能わず」とされた。ナーユ大戦の際、ただひとり【サスル放浪神Sasul】がここへ下り【ユルテナーユ天女Yltenay`たち】を救い出して戻ったことで知られる。
- dul{名:ドゥル ←→【din】【tin】}
- 1. 地方、田舎。
- 2. 封土。とくに辺境領。
- dunau{名:ドゥナウ <dunin}
- 1. 降下。くだり。
- 2. {固有)イスキュア神話における、半神半人英雄【サスル】の冥府くだりの逸話。宇宙侵入神【フールーシュ】との契約によって三千世界の底へと至る物語。
- du_nin{動:ドゥーニン <*ndonin<UNTE}
- 1. 降下する。くだる。
- 2. 落下する。落ちる。
- 3. (古)垂れる、垂らす。下におろす。
- 4. (後代に)続いてゆく。影響が後に及ぶ。
- 5. (垂直のものが横に)倒れる、崩れる。力を失う。
- e{前置:エ、直前に母音-eが位置する場合はneとなる}
- 1. 与格に先行して、運動や行為の動機・目標・空間的限界・時間的上限を明確にする:「〜のために、へむけて、まで」。
- ※例) e taud 「永遠に、時の涯まで」
- ve ne nalunda zail venav yavojen me~l.
- 「そして天女たちのために吾は一千のいくさに勝利する
- (直訳:いくさについて勝利的に存在する)だろう」
- 2. -ver動詞(節)の未来形に先行して、主文の行為の目標・停止条件・期待、反実仮想などをあらわす:
- ※例) borzn zande kuver balojai e husvier.
- 「熊たちは、少女が眠るまで待っていた」
- pher bamutai rankim ve edim e nuvier naughen.
- 「彼女は、経典を得るべく、獣にまたがり旅立った」
- ※注……前置詞【lakh】も、eと同じく行為の目的をあらわすために用いられるが、前者は行為の完了や成功を(事態の後から)語るのに対し、
- 後者は未来形を用いて未完了または失敗の可能性を暗示している。ゆえに反実仮想のニュアンスを示すことができる。たとえば、
- kuva kwin lhai lakh salver.「王は、鷲が飛ぶのを、待つ」
- kuva kwin y`dai e salvier. 「王は、石を飛び立たせるべく/
- 石が飛び立たないものかと、待つ」
- ednin{動:エドニン}
- 1. 波打つ。
- 2. 手を振る。
- ehlav{形:エフラウ}
- 1. 高貴な、尊い。
- eksavya{名:エクサーヴヤ ←→【eksavna】}
- 1. 問い。質問。
- 2. 疑問。
- 3. (仏典)転輪乗仏教において、正覚に至る最初の一歩。
- eku_win{動:エクーウィン <*eku_v-in<KU-BHE}
- 1. 生きる。
- 2. 暮らす。過ごす。居住する。
- 3. 移動する。動きまわる。 ←→【akuin】を参照。
- eku_y`{名:エクーユ <【eku_win】}
- 1. 移動民。集合名詞はekunuまたはekuvel。集団をあらわす接尾辞-nuは、語源的には、子音で終わる名詞の主格複数語尾-n/-unと関係していると思われる。
- ekuz{名:エクーズ <【ekuwin】}
- 1. 移動。遊牧生活。
- 2. (雅)天幕。
- enakh{接続:エナッハ、エナク <en-「一つの」+【akh】 ←→【ekn】}
- 1. 代替をあらわす:「〜または〜」。
- 2. 複数からの択一をあらわす:「〜する、または〜する」。元来は「その一方で〜」の意で用いられたと思われる。
- e_nav{形:エーナヴ <【e_nin】}
- 1. からまった。
- 2. 輪になった。
- e_nin{動:エーニン <EU「小指、(数えはじめの)第一の指」←→【ek】を参照}
- 1. 結ぶ、結び目をつくる。
- 2. (指などを)からめる。
- enjunak{副:エンジュナク <en-【s^a】-【ekn】}
- 1. 個別の状態や運動をあらわす:「それぞれ」。原義「一つにつき一つの〜」。
- enk-{接頭:エンク <*ekn-}
- 1. 【ek】の接頭形:「一つの〜」。
- e_nu{名:エーヌ <【e_nin】}
- 1. 結び目。
- 2. 節。(瘤のように)丸くなった部分。
- 3. (仏典)印相。結跏趺坐する際の指の形。
- 4. 交差させた指、またその形。主に呪的な意味を帯びる。
- erga{名:エルガ <*ern-<EREN}
- 1. 煙。もや。
- 2. (仏典)不確かであること。無常。 →類義語【kuhuna】、【tarra】も参照。
- ※例文)
- va-y`z nan erga.
- 「すべての石は煙である(=諸行は無常である)」
- Erndeva{固有:エルンデーヴァ <Ern+neva}
- 1. エルン王国。北方守護を命ぜられたエルン氏族が統治する、内裏の北にあたる一帯。エルンの民自身はエルンネーウェErnneweと呼びならわした。
- 2. 【ヴィルナ】の血をひく北方王家の所領。三千世界の北方に広がり、虚空蔵菩薩の加護を得て多くの転輪僧が住まわった。
- es-/ess-/ez-/es^-{接頭:エス}
- 1. 動詞の語頭について可能態をあらわす:「〜できる、〜し得る」。
- eska{名:エスカ <}
- 1. 曲がり角。
- 2. 道のうねり。事態の曲折。
- 3. (転用)金細工の飾り物。優美な曲線をもつ装飾品が多くつくられたため。
- 4. (固有)女子の人名。