SFは初恋の相手、ミステリは謎多き麗人、では異世界ファンタジーは

S「……という話題をやろうやろうと思って、ついつい一ヶ月経過してしまったわけですが」
X「そんなことより昨日のF書房との打ち合わせはどうなったんだ」
S「ああ、あっちは順調に進んでます。はやくメールしなくっちゃ。面白い企画になりそうなのは保証しますよ。新城カズマを知ってる人は合点がゆくだろうし、知らない人も椅子から転げ落ちるくらいビックリする、みたいな」
X「ほほーん」
S「で、表題の件なんですが、以前の記事で『SFは初恋の相手』みたいなことを書いてて、そうすると他のジャンルは新城にとってどんな感じなんだろうと」
X「その前に、SFは何がどう初恋なんだ」
S「最初に自覚して読んだ本がSF、それも海外SFの最良の部分だった……ということですかね。アジモフ(当時はアシモフでしたけど)の『ほろびゆく銀河帝国』……バローズの『火星のプリンセス』……E・E・”ドク”・スミスの『銀河パトロール』。小学2年の夏休みだったかな。この3冊を読んでなかったら、小説家にはなってなかったでしょうね。それどころか中学入学直後にいじめに遭って現世とおさらばしてたかも」
X「物騒だな」
S「でもそれくらいの衝撃だったんですよ。命の恩人、とまではいかないにしても子供時代の生きる糧であったのは間違いないです。それ以来、SFを前にすると、とっても緊張して、でも同時にフラフラとついていってしまうような気持ちになって」
X「じゃあミステリは?」
S「こっちはこっちで、やっぱり子供の頃から大乱歩に始まって、ホームズやルパンは好きでした。学生時代はカーキチで夢野久作マニアで小栗虫太郎に私淑してたんですが、その後は新本格をたしなんで(これは*****が出てきたあたりで『さすがにもう付き合いきれん!』と壁に投げつけましたが)、初期クイーンにはまって、ハードボイルドに目覚めて、冒険小説の沃野まで遠出して、ぐるっと回ってチェスタトンボルヘスを再発見して、一昨年あたりは後期クイーンの新しい読み方を模索してたりして」
X「クリスティー以外はひととおりハマってんのか」
S「そっちも最近読むようになりました。だから今でも『謎多き麗人』なんですよ、新城にとってのミステリというのは。一時期は本格ミステリ必要十分条件はこれだ!みたいな結論も出たんですが、しばらくして『いや待てよ』みたいに自分の考えが変わってきて。ちなみに去年は、沢木耕太郎の一連のノンフィクションやエッセイを『大河推理小説』として読んだらどうなるか、という実験を一人でやってました」
X「あいかわらず、わけわからん遊びを考案するのが好きだな。ファンタジーはどうなんだ、これも長い付き合いだろ」
S「のはずなんですが……実はトールキンの他はあんまり読んでないんです。特に異世界ファンタジーについては、ト翁さえあれば他に何も要らぬ、架空言語と架空地図を創らない作品は認めぬ!くらいに偏屈な原理主義者なので。実際、英語圏では山のように資料が刊行されてますし、研究も進んでますから、フォローするので精一杯です」
X「たしかに……『中つ国の歴史』や『フーリン』どころか『ホビットの歴史』まで出てるからな。――それで思い出した。ライトノベルはどういう心理的位置づけなんだ、お前の中で」
S「うーん……(考え込む)……前にもどこかで書きましたけど、新城はたまたま文庫書き下ろし小説を書いてたらその文庫レーベルがだんだん『ライトノベルですよ』と呼ばれるようになった、という印象が強いので、意識してライトノベルを書いたことは、実は今まで一度もないんですよね。他にもそういう方がいらっしゃるかどうか調べてはみたいんですが。ライトノベルを書いたことがないライトノベル作家。うーむ」
X「(また今日もオチがないパターンかな?……)」
S「あ、それで思い出した。実はこないだ賀東招二くんと新年会で会ってですね、PBMプレイヤーもしくはマスター出身の作家さんや編集さんが今どのくらいいるんだろう、という話題になったんですよ。それで、まずは賀東くんから始めて、交友関係を数珠つなぎにたどっていって、どこまで行けるかなというのを今年いっぱいかけてやってみようと」
X「また変なゲームを……」
S「名付けて『舞踏会の生徒手帳』! 経過はこのブログで報告しますので、興味のある方はぜひどうぞ」
X「読者に呼びかけてんのか、関係者に連絡してんのか、どっちなんだよ」
S「うーん、両方ですか?」