われら銀河をググるべきやDo We Dare Google the Galaxy?【その07】:「世界’を我が手に!」

S「というわけで、前回のグーグル礼賛に反論というかツッコミを入れてみたいと思います:



07のA:ぐぐる*1とコモンちゃんの夏休み大冒険

えーまずは簡単な前フリとして、Googleという巨大システムの根幹に横たわる構成原理と米国法体系との関係から……」
M「どこが簡単ですか! むちゃくちゃ大きいですよ!」
S「だって調べてったら、そうなっちゃったんだもーん。ともかくですな、今回のGoogle×著作権事件のいちばん根っこにあるのは、

  • 高度に発達したGoogleは二次創作と区別がつかない

というおそるべき真実なのですよ、みなさん(と居間に集められた事件の関係者一同を見渡す)」
M「はい?????」
S「でも、その結論へとびつく前にいろいろ説明させてください。まずは、近代西洋の法律体系というものには大きく分けて2つの系統がある、という第1の事実から。このへんに関してのまとまった説明は、日本語で書かれたものだと……このへんかな?

一方には大陸法civil law、もう一方には英米法common lawってのがあると。で、著作権についての発想が両者ではかなり違ってるらしいんですね。三つ目のリンク先から引用しますと、

 簡単にまとめてみると、最初は出版社(印刷業者)の利益を守るために生まれた制度が、その当時にちょうど広がっていた自然法理論※6と結びつき、著作者の権利という形を取るようになりました。そしてそのまま著作者の権利というものを重視していくようになったのが大陸法系として、元々の出版社の利益を重視したのが英米法系としてそれぞれ発展したわけです。その後、国際的な枠組みが必要になったためそれぞれの説を折衷するような形で条約が作られて枠組みが作られたものの、それぞれの国ごとに大陸法系よりだったり英米法系よりだったりしています。
  真紀奈の著作権法講座 −第2回−

だそうです。
この法体系というか法思想の違いなんですが、新城の理解したところでは、

  • 大陸法civil law
    1. ローマ法大全Corpus Iuris Civilis(の再発見)に由来する
    2. 「原則を決めて、隅から隅まで設計して、ぜんぶ完璧な体系を目指そう!」
    3. フランスやドイツを筆頭に、欧州各国また独仏の影響が強かった世界各地で採用
    4. 判事(裁判官)など「上の権威」が最強
    5. なにやらカソリックの真面目な修道士っぽいノリだなあ〜(もしくはヒルベルト的?)
  • 英米法common law
    1. イングランド&その周辺の政治的ドタバタ体験から少しづつ確定
    2. 「一ヶ所に真理を集めておくと色々問題多いので、ちょっとづつパッチあててこうぜ」
    3. 英米を中心に、それらの影響が強かった国で採用
    4. 陪審制など「同階級出身の同輩の参画」が重要
    5. プロテスタント的……というより、西海岸のハッカー風?

ということではないかと。あくまでイメージ重視ですが。このへんは大きなネタなので、次回以降さらに詳しく追いかけてみたいと思います。連続殺人ミステリの連載みたいなもんだと思ってください。乞う御期待!」
M「(調べものが完了してない時の言い訳が、小説家には色々あっていいなあ〜……)」
S「なんか言った?」
M「いえいえ」
X「ふーむ法体系の違いねえ……(Wikipediaを覗き込んで)そういえば日本て5月から裁判員制度になるけど、あれはどっちかってえと英米法のノリじゃねえの? でも日本は大陸法の系譜に入ってるんだよな」
S「明治時代に、たしかドイツから輸入というか翻訳というか、学んで持って帰ってきたんじゃなかったでしたっけ」
M「法学・医学・登山の分野はドイツ語っぽいですね、たしかに」
X「あーなるほどね。この話は各国ミステリの構造的な違いにもつながるな。アメリカの法廷ドラマってのはcommon law原則なんで『その場で同輩たちpeersが集まって、ともかくこの件についての白黒を考えようぜ! 必要なら憲法修正すりゃいいんだ!』になるし、日本の時代劇は『お白州の前で真実が明らかとなり、見事な大岡裁きが……』式になるわけだ。物語工学の出番だぜ」
S「ふむふむ。新城もずいぶん前から、日本語の『著作権』と英語の『copyright=複製する権利』って、なんか微妙にズレてるなあと思ってたんですが、ようするにそういうことなんですね。きっと『著作権=原作者の権利』という理解枠組はドイツ語のUrheberrechtから来てるんだ……ふーむふむ」
M「余談はいいから、話をすすめてください」
S「はいはい。さて、事実その2
今回、Google×著作権という事件が起きたのは、米国内であるということです。
ということはつまり『著作権てのは複製権のことだよん』と考える人たちのあいだで起きた、ということになります。どっかからインスピレーションを受けて新しい創造的な何かを魂の内で生み出した素晴らしい個人を最大限に尊重しませうという大陸法のノリ*2ではなく――いろいろアイデアを貸したり借りたりすることをうま〜く案配することで、社会全体がちょっとづつ改善されてゆく(その途中でドタバタは当然おきるけど、そこはまあ目をつぶって/弁護士が儲かるのでもっとドタバタしようぜ!みたいなノリも含めて)ことを尊重しよう、という発想で。
で、事実その3Googleは以前に『勝手に検索して表示しやがって、キャッシュとかいう方法でもって人のデータをコピーしとるやろ、それって無断複製ちゃうんかゴルァ』と訴えられたことが実はあるのですが……そこで、

  • 検索閲覧という行為は、確かにぶっちゃけキャッシュというかたちで他人の創った情報を無断コピーしとるわけだが、その際に分類したりタグくっつけたりリンクの重みづけを評価したりと色々なんか新しい情報を付け加えてるし、目的も元のデータとは違ってきてるんで、そうなるともうフェアユースの範囲内っちゅうか、これはこれで二次著作物とはいえ派生的derivativeではなく変容的transformativeということでOKなり(新城的意訳)

みたいな判決を勝ち取っているのです」
M「……え? 二次著作物って2種類あるんですか?」
S「大きく分けると、そういうことらしいよ*3。パロディ作品の扱いなんかも、その枠組みで処理されてるっぽい。オリジナル著作物から二次的/事後的に生み出されるものとして、derivativeとtransformativeという2種類があり得る、そして後者であるためには何らかのオリジナリティの付加なり目的の変更なりが必要です……というのが、米国の現行の法体系のもとでの判断なわけだ。これが、ものすごく重要なポイントになる。
つまり……

  • Google検索閲覧機能の根幹であるキャッシュには、(ある程度の)オリジナリティがある

んだ。いってみれば、Googleは毎秒ものすごい勢いで、全世界という書物のパロディを創作して/させて、自らの内で流通させているわけだ」
Y「え、てことはグーグルって世界最大の同人サークルなんですか?」
M「わあ、いきなりYさんが横から」
S「法律的にはそういうことだね。もしくは全世界のユーザという同人作家たちに新刊の原稿を毎秒発注してるサークルの営業担当というか。飛浩隆さんの表現を敷衍するならば……僕たちはGoogleという覗き穴を通して、世界を眺めているのではなく、Googleのための世界’を日々創作しているんだ」
M「がーん……」
S「このへん、以前に紹介した米国の腐女子サイトとも絡んでくるんだけど……あのサイトで、(主にやおい〜BL的な)二次創作のことをTransformative Workと呼んでる/呼ぶ必要があるのは、そういう理由もあってのことなんだと思う。彼女たちは、おそらくはGoogleが勝利した判例を基礎に、二次創作の法的権利を主張したいんだ。自分たちがやっていることは派生的ではなく変容的なんです、だから(ある程度の、オリジナル作品の権利を犯したりしない範囲で)存在する権利はあるんです、とね。
というわけで、最初のテーゼに戻ってくる。僕たちは、Googleを使ってどこかのサイトを閲覧しても、そのサイトの著作権者にお金を支払わなくてもいい。なぜか。実は、僕たちは検索することで何かちょっとだけ新しいもの/オリジナルなもの/変容したものを創っているんだ。検索閲覧という行為……柳川さんによればググる権利……は、僕たちがコミケで同人誌を並べて売ったり買ったりしてるのと同質のことなんだよ。米国著作権法の解釈によれば」
X「……ちょっと待った」
S「はい?」
X「じゃあ、その英米法でパッチ主義で貸し借りドタバタ社会のはずの米国で、どうしてディズニーみたいな権利ガチガチに固めた連中が出てくるんだ? それに一連のビジネスモデル特許とか、知的所有権とか、著作権の期間延長とか、そのへんも米国発だろ。なんか変じゃねえか」
S「そこなんですよ……これはあくまでも新城が調べた範囲で想像するところなんですが……ようするに、

  1. ゲームに勝ち目のない初期の頃は『貸し借りOK!』『原作者の権利は小さめに!』と言っていた
  2. その後勝ち続けたので/でも今後は負けそうなので、失うのが怖くて『やっぱ権利ガチガチで』と言い出した
  3. でも一部の人(たぶん西海岸中心)は『いや、それぁやっぱまずいっしょ!』『世の中オープンでいこうぜ!』と反対してる

んじゃないかと」
M「…………た、たちの悪いゲーマーだなあ〜>アメリカ」
S「まあね。実際、19世紀(特に前半)の文芸史をたどってゆくと、当時文化後進国だった合衆国はものすごい勢いで欧州産の芝居の脚本やら楽曲の楽譜やら小説やらをパクったり勝手に出版してたし。最近話題になった中国のネズミーランド(仮名)のことなんか、ほんとは全然文句言えないはずなんだよ。
まあ、当時はまだベルヌ条約以前なので著作権自体が今ほどガチガチじゃなかったという事情もあるし、現在でも本家ネズミーランドのアレはちょっとナニをアレしすぎなんじゃないですか?と批判してる人はいるようだし、いちがいに『アメリカ悪い! 悪いアメリカ!』みたいな一般化は行き過ぎだと思うわけで……歴史マニアの新城としては『ちょっと落ち着いてお茶でも飲んで過去を振り返ってみようよ』と」


(みんなで休憩してお茶を飲む)






07のB:A Canticle for Goog'owitz?

S「えー、という上記の法理によってGoogleは世界’を毎日せっせと二次創作している/させている……GoogleBookSearchというサービスは、あくまでもその一部にすぎないわけです。
その世界’について、今回の合意でGoogleが実に確実な収入源&独占権を得たことに、そしてそこに安全弁があまり設置されていないということに、新城としては注目しております。ざっと調べたかぎりでも、

  • 例の『版権レジストリ』の設立資金はGoogle持ちだが、以後の運営資金負担は出版社連合のほうである
  • 今回の和解に参加した図書館は、独自にスキャンしたデータをGoogle以外の業者へ渡してはいけない、という条項がある
  • 〈書籍〉〈絶版〉等の定義もGoogle側が決める……というか決めちゃった
  • GBSでは誤植の多い版も閲覧できる……というか、誤植の少ない良質なバージョンだけを閲覧させるという安全弁がない
  • 全米の公共図書館Googleが閲覧用端末を設置してくれるという合意もあるが、しかしよく考えてみれば、それら端末からの膨大かつ有益な『一般人の閲覧傾向に関する統計データ』をGoogleは手に入れることになる
  • 有力な図書館が今回の合意に参加していることで、今後米国内では『GBSを使って、GBSの発想や基本哲学にもとづいて、資料を探したり調べたりする学生』が大量に生まれることになる……そして彼らはその後も使い慣れたGBS的なサービスを社会人として使い続けるだろうことは、容易に想像できる
  • 無料で2割を閲覧できるGoogleBookSearchは、有料ですべて読めるパートナー・プログラムGoogleBookPartnerProgramへの強力な『呼び水』として機能するかもしれない

といったあたりは確実です。他にもまだあるはずですが、これだけでも相当デカいですよ。ダーントン先生が知識の独占を心配してるのは、けっして杞憂ではないと思います」
M「なんですか、この最後の『呼び水』って」
S「それはだね……絶版の『素晴らしい書物』を2割だけ無料で見せておいて、でも物理書店では絶対に手に入らないケースを考えてみればいい。普通の本ならAmazonに注文もできるし書店や出版社に物理的に注文してもいい。だけど、彼らはあくまでも物理的な書籍を物理的に扱う業態だ。どこかに在庫をストックしておかなきゃいけないし、そのための経費もかかる。どうしても絶版本が発生する。けれどGoogleは?」
M「あ」
S「素敵な絶版本をぜんぶ読みたければ、有料のGBPPを使うしかなくて……使うのが一番効率的で……これよりもっと効率的な方法をつくることは合意によって実質的に禁じられているんだ。こないだ柳川さんも言ってたけど、Googleは『無限大の書店に無限量の本を品切れさせずに並べておくことができる』んだから。
ただし忘れちゃいけないのは、Googleはあくまでも書棚の管理を(ほぼ独占的に)委託されてる業者にすぎないってこと。本を買いたいなら、Googleが用意してくれてるリンクを経由して電子的書店へ行って、電子的レジへ持っていって、著者と出版者にお金を払わなくちゃいけない。もしも本が物理的に品切れなら、やっぱりリンク経由で電子的図書館へ行って、そこで読む。ちなみに品切れ本の電子的閲覧業務を(独占的に)委託されてるのも、これまたGoogle
M「ん? あ、そうか……つまりGoogleの視点から眺めた場合、書籍というのは、『物理的に購入可能か/不可能か』と『著作権がまだ残ってるか/もう切れてるか』のかけ算で4種類に分類されるってことですね」
S「後者には、著作権者がGoogleにOKを出す出さないという区分もある。だから正確には6種類かな:

著作権まだ有効で著作権者のOKもなし 著作権まだ有効だが、OKがある 著作権がもう切れてる(=人類共通の財産)
物理的に購入可能 0 0.2G 0.2G→1G?
不可能 0→0.2G? 0.2G→1G? 0.2G→1G?

Gというのは今回Googleに(ほぼ独占的に)委託された領域。書籍全体の2割まで無料で閲覧できる……0.2という表示がそれだ……でもって、それが1Gつまり有料なら全部読める範囲への『呼び水』になってる。
ただし、これはぜんぶ2009年1月5日までに出版された書籍についての分類だ。
今回の合意では、そこに巨大な分水嶺が設定されている。もしかしたらそれは、人類史上の〈知識の分水嶺〉ベスト3に入るくらいの何かになるかもしれない。ならないかもしれない」
M「ちなみにベスト3の残りは何なんです?」
S「うーん……結果論で考えれば、まずはグーテンベルク印刷術が広まった時期と、あとは古代アッカド帝国がメソポタミアを初統一したところかなあ。それ以前とそれ以後では、日常生活から文明から世界参照枠組までのあらゆることが違ってきちゃうぞ、という意味において」
X「ていうか、09年1月6日以降の書籍の扱いはどうなるんだ。また集団訴訟するのか、それとも今回の合意を延長するのか」
S「そこですよ。それのやり方次第で、僕たちの文明の様相そのものが決定してしまうかもしれないわけで。まあ、パッチ主義のノリからすると『N年ごとに延長しましょうか』とか言いそうですが……弁護士も仕事増えるし……」
X「N=5、くらいか?」
S「うーん。20くらいにしといたほうが冷静に考えられると思うんですが」
X「じゃあ、あいだをとって10で」
M「あいだじゃないじゃないですか」
X「いいんだよ、適当で。人生、いつもベキ関数的な側面を見ていこうぜ*4

M「意味がわかりませんよ!」
S「まあまあ。それより、こないだの続きにいきますよ。前回柳川さんはGoogleの覇権が続く前提で事態を分析してましたけど、新城は逆に、Google覇権が成立しない可能性を考えてみたんです:

  • GBSが(どこかの国の)独占禁止法にひっかかる
  • 米国の最高裁のメンツが入れ替わったり何だりで、今回の合意がひっくり返される
  • GBSが引き金になって、逆にベルヌ条約のほうが改定される
  • 今回の情報漏れみたいな事故がもっと頻繁に起きて、評判が落ちる
  • (将来的にGoogleは必ずテロ攻撃の対象になるだろうから)EMP攻撃に対して、Googleがどの程度のセキュリティを持っているのか?という不安が台頭する
  • 今年5月に開始されるWolflamAlphaが、新たな標準検索エンジンとしてGoogleを凌駕する
  • Googleが新規事業で/何かの訴訟に負けてひどい赤字を出して倒産する
  • コミックは書籍や否やで大揉めに揉める(特に、例のジャパニーズでオタクでヘンタイなコミックなんかを2割まで閲覧できていいのかよ!という右派からの強力な反論が飛び出して、ややこしい国際問題になる)
  • Google株をどこかの国が大量に買い占めて、それを危機と感じた米国がGoogleを国の管理下に置く(あるいは置こうとしてシッチャカメッチャカな事態になる)

X「いろいろ出してきたな、おい」
S「こういう妄想するのが本職ですから。あと、ベルヌ条約は『登録とか申請とかが要らない無方式主義』なので、それと今回のGoogle和解案の『除外して欲しいなら連絡すればいいでしょ?という方式主義』とは原則的に齟齬があるんでは、という指摘も見かけました」
X「ていうか、そもそも著作権が財産権の一部なのか人格権の一部なのかで認識にズレがあるんだよ。さっきの英米法vs大陸法に戻っちゃうけど。このへんは、だから、先に言ったもん勝ちの世界なんじゃねえの? ようするに。まだ著作権てのが何なのか、どういうふうにルール設定すれば社会全体が豊かになるのか、人類はよく解ってねえんだ」
S「ふーむ。世界が(というか人類の歴史が)ゲームのルール設定権をめぐるゲームである、ということを分かってない人は確かに多そうですがね*5
そんなこんなで、GBS構想が今後ひっくり返らないまでも大幅に修正される可能性は、確かにあります。でも今の新城が気になってるのは……ダーントン先生と同じく……独占/寡占の危険性についてなんです。
今後、僕たちはますますネット経由で世界を観ることになってゆくでしょう。キャッシュ技術が生み出す世界の変容バージョンを……二次創作された世界’を。
でも、世界’の他に、世界’’とか世界’’’とか世界’’’’とか、いろいろあったほうが安全なんじゃないんでしょうか?
そもそも、人類の蓄積してきた文字記録(の大半)管理業務を、法人legal personに、しかも単一の法人に委託してもいいんでしょうか?
法人なんて、長めに見積もってもまだ数百年の歴史しかない『新種の生物』なんですよ。サラブレッド種よりも新しいんです。人類史的尺度からすれば、つい昨日の話でしかない。
いちばん長寿の会社組織って、たしか日本の金剛組という建設会社だったと思うんですが、このへんはかなり例外的な存在ですし、それ以外で古くて現存してる会社となると、せいぜいが1000年くらいでしょ」
M「せいぜいっても、ずいぶん長いですよ」
X「いや待て待て。そのへんは例の冪状分布だからな。ほとんどの会社はもっと短いわけだし、おまえの指摘したいところは大体わかった。で?」
S「つまりですね……僕たちは法人というものを、本当に解っているんでしょうか? いったい法人とは、何者/物なんでしょうか?……」




07のC:Googleなんかこわくない!大作戦 Operation 'Who's Afraid of a Big Bad Google'

S「えー、というあたりで次の話題なんですが」
X「って今のはフリじゃねえのかよ!」
S「違いますよ。ほんとにまだ調べ終わってないんですもん、法人とは何なのか。
というわけで、あらためまして。今回の和解案もしくはGBS自体に何らかの意味で対抗したい皆様におかれましては、以下のような戦術がオススメであると現時点の新城は愚考いたします:

  • ものすご〜く安価な個人用の書籍スキャナを開発する(コピー機がファックスと合流して、あっというまに巨大事務機器からお手軽家電にまで進化したように)
  • GBSよりも安価で質のいい業務用スキャニング技術を開発して、GBSよりも安い価格で書籍閲覧を提供する
  • 『この世に一冊しかない書物』を一刻も早く入手してGoogleに渡さない
  • 『この世に一冊しかない書物』を出版する(という事業で儲ける)
  • スキャニングできない書籍を出版してベストセラーにする
  • 英米法を、ものすごい勢いで勉強する
  • 大陸法もしくはイスラーム法を応援する
  • インターネット技術を国ぐるみで拒絶して、〈人類文明の隠者〉となって潔く衰亡する*6
  • 世界的な公共図書館ネットワークだか何だかが、いつでも〈第2GBS〉を立ち上げられるように準備しておく

新城としては、最後の案が一番好みですけどね。かの心理歴史学の開祖ハリ・セルダン翁も仰ってますし……
どうせ作るんなら、一つじゃなくて二つ作っといたほうが安全じゃろうよ』(意訳)
って」
X「最初にそれを指摘したのはセルダンじゃなくて×××××じゃねえのか」
S「そこはネタバレになるからアウトです」
松岡修造「はいネタバレ! いま、君ネタバレしたよ!」
X「うるせえな、もう! 松岡ネタはもういいよ!*7






07のD:結語……もしくは「我に返る我々」について

S「とまあ、Google×著作権に関する現時点での新城の考えは、おおよそこんなもんなんですが……それにつけても思うのは、GBSやそれを超えるサービスが今後どんどん実用化されていって、書籍に限らずなんでもかんでも閲覧できるし検索できるようになったら、僕たちは何かを忘れることってできるんでしょうかね?」
X「あ?」
S「もうちょっと直接的に言うならば……忘れたほうが良いようなことまで憶えてる/思い出させられる(かもしれない)状態というのは、ヒトという種にとって本当に幸せなことなんでしょうか?
M「うーむ」
S「というあたりで、そろそろお別れの時間となりました。それでは最後の曲、アリスで『遠くで汽笛を聞きながら』」

M「ってなんで急に深夜のラジオDJ風なんですか!」
S「いや、なんとなく」

*1:©ひかわ玲子さま

*2:ちなみにこのイメージは、インスピレーション→化石燃料、魂→密閉率の高い容器、等々と置き換えると、19世紀に大発展した蒸気エンジンによく似てるんですよね……。してみるとpeer productionやTweegle時代の芸術家像というのは、やがて到来するだろう『よりオープンな電力ネットワーク』と似てくるのかもしれません。

*3:「変容的」というのは新城があてた日本語で、正確にはちゃんとした法律用語があるのかもしれないのでご注意ください。

*4:ここの部分、はじめ「指数関数」と誤記してたのを横棒で残して「べき関数」と直しておいたのですが、かえって読みにくいので削除してみました。

*5:M「たとえばワシントン軍縮条約とか、ニュルンベルク裁判とか、東京裁判とか」S「それを言うなら○○○問題も」X「いや×××論争こそが!」(以下しょうもないマニア談義が続く)

*6:渡老人「なにもせんことじゃよ……」S「もちろん冗談ですよ!」

*7:新城の周辺で流行ってたのです。