GGG10:スキャナーに生き甲斐はある、もしくはグーグル書籍サーチにちゃんと対抗する方法


X「そんなこんなで、

  1. 今回のGoogleの戦法は、フェアユース集団訴訟のコンボだった
  2. 作家組合が(あまりにも素直に?)和解しちゃったせいでグーグル(以下グ社)はタナボタ大儲け
  3. 日本中の著作権者が封書をもらって「でもどうしたらいいのよ!?」状態に
  4. そして期限は目の前だ! 以下次号!
  5. と思ったら『期限は9月4日まで延ばします』というオチが!

というのが、ここまでの大ざっぱな要約なんだが」
S「まぁ落ち着いて考える時間ができたのは、良かったじゃないですか。――ということで、先日の早見表で『さてどうしよう』と悩んでいる方向けのアイデアを披露したいと思います。すなわち、グーグル書籍サーチに真っ向から対抗するための」
M「それって和解案から離脱するのとは違うんですか」
S「うん、もうちょっと根本的な対抗策だよ。すなわち〈第2書籍サーチ〉を構築すればいい、という案―クラウド・スキャニングによってね」
M「クラ?」
X「……ははーん。ようするに、ネットで繋がった世界中の参加者/ボランティアが分担して、一気に、グーグルよりも大量の書籍をスキャニングしようってんだな?」
S「そんなとこですかね。クラウドについてはこちらをどうぞ→[wikipedia.org/クラウドコンピューティング]。
ざっと暗算してみますと……仮に700万冊*1を基準にするとして、平均ページがまあ300……いや、多めに500くらいにしときますか。これで5*7*10^(6+2)=3.5*10^9、つまり35億ページ。一人の参加者が1ページをスキャンしてデータをアップするのに、ちょい多めに見積もって1分かかったとしても――」
X「10億人で同時にかかれば3分半で済むわけだ。1億人なら35分、1000万人なら約6時間、たった100万人でも3日ありゃ充分。地球は丸いんだから、いつでもどこかは昼間だしな。常時誰かがどこかでスキャン&アップしてればいい。分担がかぶらないようにするには、うまいことタグつけたり、スキャナに『そのページは既に世界のどこかでスキャン済みです』警告機能をつけときゃいい、と。そういうことだろ?」
S「完全に連続じゃないでしょうから、もうちょっと余裕をとるとして……全世界どころか日本だけで延べ100万人が1ページあたり5分だとしても、半年もあれば大丈夫でしょうね。グ社の700万冊スキャン済みってのは、実はそんなに大した分量じゃないんです
M「校正の時間も必要ですよ」
S「あ、そうか。それでもまぁ1年だ。1年あれば『黒船』に対抗できるんですよ、どうですか皆さん!(と和解案反対派諸氏のほうを見る)」
M「そりゃ計算上はそうでしょうけど。100万台のスキャナはどこから手に入れるんですか」
X「そこだな、問題は。仮に安価で便利なスキャナを開発して販売するとしても、わざわざグ社に対抗するためだけに購入する暇人はそんなにいねえだろ」
S「すでに普及してる機器を改良すればいいんですよ」
X「というと?」
S「決まってるじゃないですか。日本中のオフィス・コンビニ・公共施設・家庭に置かれてる膨大なコピー機ですよ。できればオフィスにあるファックス兼用機のほうが望ましいですが」
M&X「……あ」
S「あれは本質的にはスキャナですからね。しかもファックス兼用機は当然ながら既に回線でつながっているので、あとはデータの規格統一・共有・突合・タグ付加等のシステムを組み込めばいい。どこか中央にデータを集めるのではなく、ネットのあちこちに散らしておく……あるいはいっそのことP2Pで各マシンに分散させるか。で、使ってない暇なコピー機を、ちょっとづつ〈日の丸書籍サーチ〉のために働かせて」
X「SETI@homeみたいなもんか」
M「でも今のコピー機だと、書籍のノドのところが奇麗にスキャンできませんよ」
S「そのへんは上手いレンズを開発すれば、何とかなるんでないの?(←ものすごい楽観的な性格)。実際、新城のアイデアに似たようなSNS、たとえばLibraryThingなども始まってますし」
X「ふーむ」
S「それがダメなら、もう一つ別のやり方があります。著作物に関する権利を長〜く主張したい作者のみなさんは、自分の死亡日時を明らかにしないで『もしかして今もまだ生きてるかも』ってしとけばいい
杉下右京「はいいぃ!?」
S「これなら著作権法を改正しなくてもいいし、早めに著作物を開放/解放したい人にも迷惑はかからない。名付けて、弘法大師方式!」
M「いやまあ……それはそうかもですが……」
X「その代わり、失踪から七年で死亡宣告ですっていう条文は改正する必要があるんじゃねえの」
S「失踪後の死亡宣告って任意じゃないんですか?」
X「それはねえだろ……いやちょっと待てよ……(検索を開始)」
S「まあ二つ目の案はあれとしても、最初の案は、現時点の新城が提案できる『たったひとつの冴えたやり方』であります――いかがですか?」
M「なぁんか騙されてるような気が…………あ、待てよ!」
(その11に続く)

*1:例の、グ社が無許可でスキャンし終えていた冊数です。