アブノーブルabnoble

M「そういえば、まだ『革命!』2巻の原稿は公開しっぱなしなんですか」
S「うん。公開したままにしといてください、という要望のほうが多かったもんで。限定公開を終わらせたい諸君、意見を表明するならば今がチャンスだぞ!」
M「って何を煽ってるんですか。公開したいんですか、したくないんですか」
S「いや、単に削除するのが面倒になってきただけで……それに世界では、もっと重大な事件がいくらも起きてるし。一介の小説家が演算リソースを食いつぶしてることに対してとっても罪悪感を感じてるのは事実ですよ。ああそれにしても、どうなるんだろうガザ侵攻……」
M「(……グウタラなんだか小市民なんだか、よくわからん人だな……)まあいいですよ。それで今日のネタは何なんですか、これ」
S「これはこないだ思いついた単語だよ。昨今はネット右翼がどうしたとか色々盛り上がってるけど、べつに右に限った話じゃなくて、ああいう人たちは昔からいたし今後もいるだろうなあ、と。それで、口先だけでかいことを言って実際にはあんまし何もしないような***な人たちを、右も左も関係なく、まとめて呼ぶ単語が無いかなあと思って」
M「ただの『ダメな連中』じゃいけないんですか。もしくは『無敵の人』とか」
S「うーん、それだとちょっと意味合いが違うし、語源学的にも面白くないんだよなあ」
M「またそんな言語マニアな」
S「しかし新城は現に言語マニアなのだからしょうがないのだ。人間、己を偽ってもあんましロクな目に遭わないぞ、うむ」
M「急にカイゼル髭をいじってふんぞりかえらないでください。それでアブノーブルというのは……」
S「……abnormalからの連想です。もともとabnormalってのも元来anormal=a(n)+normal、つまり『通常/典型とは異なっている』という単語だったのが、ラテン語の形容詞abnormis『規範から乖離した』>『怪物的な』に影響されて綴りが変化したところから始まってるらしいんだ。で、この『〜でない』が『〜から離れた』と言語使用者たちの頭の中で接近してゆく過程が面白いなあ、と思って気になってたというか気に入っているというか。ちなみにアボリジナルaboriginalは、同じくラテン語のab origine『原初から(そこに生活している)』=『先住民』でありまして、こちらはab『〜から』を時間次元で解釈した使用例ですな」
M「てことは、アブノーブルというのは……『ノーブルじゃない』人たち?」
S「そういうこと。右も左も上も下も***は***だし立派な人は立派なのです。新城の友人知人の中には、熱烈な皇統崇敬者もいれば共和制を夢見る人もいるけれど、長年いろんな人たちを観察してて、確かなのはそれだけです。どこにでも***はいる、けれど立派な人もいる」
M「ほほー」
S「と同時に今回の単語は『ノーブルなるものから派生し、そして乖離していった』というニュアンスも含めてるのですよ。立派な人の子供が必ずしも立派ではないし、その逆もまたしかり。このへんを考え始めると、じゃあnobleであるとはどういうことなのか……とか、人は果たして如何なる時にnobleでありえるのか……といった色々興味深い話題が派生するんだけど、それはまた長くなるのでそのうちに」
M「ふーん。(なんか、いつになく真面目な話題だなあ。)ときに新城さんの定義ではどうなるんですか、ノーブルであるというのは。血統主義とかじゃないわけですよね、今の話だと」
S「当然! そうだなあ、自分にとってのnobleというのは……」
M「というのは?……」
S「己の言動を笑い飛ばすことができて、他人の運命のために泣くことができる者……かな?」





M「……って最後はこういうオチですか! せっかく真面目な話題だったのに! せめて、のび太の画像とかにしてくださいよ!」
S「いや、探したけど見つからなかったもんで」