hexalexy(ヘクサレクシー)

M「って今日はてっきりオバマ就任ネタかと思ったんですが、違うんですか」
S「そっちの話はもうちょっと新城の中で熟成させてから書こうと思って。それに就任演説のほうも、思ったよりは実務的な内容だったので、そっちを和訳する前にキング牧師のやつでもやろうかなあと考えてます。で、表題の件なのですが、これは昔ヘミングウェイが、わずか6語からなる超短編小説というのを書いて、しかも『これが俺の最高傑作』とのたもうた……という小粋な逸話があってね」
M「6語って、英単語が6つだけ? そんなんで小説になるんですか!?」
S「なるのですよ。以下をご覧あれ:

 For sale: Baby shoes, never worn. 売ります:赤ん坊の履物、未使用。

……ね?」
M「……なるほど……これはたしかに……」
X「背後のドラマを想像するだけでゾクゾクするな。この文体はあれだろ、新聞の広告文体なんだろ?」
S「だと思います。で、この逸話が元になって、たくさんの作家が同じ『六語小説』の課題に取り組んでたり雑誌が回想録を募って本になったりもして……そのへん興味があってネットで調べたところ、six-words storyというのが通称らしいんですが、どうも今ひとつピンとこないなあと。極短編小説とかは別の意味でもう使われてるし。で、呼び名を考えてみたんです。それがhexalexy」
X「それギリシャ語で『6つの単語』って言い替えただけじゃねえか」
S「ダメかなあ……他にもhexlexとかhexelingってのも考えたんですけど。Hexlexなら、ちょうど6文字だし」
X「名前はどうでもいい。新城カズマ作のやつを見せてみろ。どうせ創ってみたんだろ」
S「御推察のとおりなんですけどね。ただ、どうしても新城がやると、ヘミングウェイ的な人生の断片というよりは、SF/ホラー/奇妙な味の超短篇みたいな感じになっちゃいました。以下、習作です:

"Home before anniversary! Ship's name? TITANIC-something."
「記念日までには帰るよ! 船の名前? タイタニックだったかな」


"Correction: KID apprehended. KIDNAPPERS fond mutilated."
 第一報訂正:子供は無事保護。バラバラ遺体は誘拐犯たちのほう。


Imagine... what if dinosaurs were extinct?
 想像してごらん……もしも恐竜たちが滅亡していたら?


"Regrets? Everyday. Should've followed you, Lucifer."
「後悔? 毎日さ。君の側につくべきだったよ、ルシファー」



……どうしてもセリフっぽくなるのは、習作ということで御勘弁を。ほんとはこれ、日本語オリジナルでやってみたいんですが、日本語で6単語となると助詞とか助動詞どうするんだという問題が出てきそうなので、ルールを多少変更しないと面白くないんですよ。うーむどうしよう」
X「と思っていたら、twitterでH嬢がこんなの書いてたぞ:

 ミルクティうまいようまいよミルクティ   (byH)

どうだ。川柳っぽくもあるし。名詞と動詞の語幹、つまり語尾変化を除外した品詞の数もちょうど6個だ」
S「そんな強引な。ミルクティって複合名詞で1つじゃないんですか」
X「まあそのへんはトランプのAみたいなもんで、どっちに採ってもよし、としようや。で、全体で18文字以下ならOKと」
S「むむむむ……じゃあ暫定的にそのルールにしときましょうか」
H「中島敦も『うまいようまいよ』みたいな短歌書いてましたよー。『書物の王国』の美食の巻に確か」

S「お、そうなのか。さっそく読まなくちゃ。美食の巻はこないだ買って、どっかこのへんに積んでおいたはず……わあ!」
(膨大な書物が一気に崩れ落ち、一瞬で四人とも埋まる)




追記:
S「(本の山から抜け出して)語句修正と、あとリンクも増やしてみましたー」