15x24の4巻こっそり特別先行公開……(コメント欄でQ&Aなど追加あり)

S「……といっても、4巻の『あとがき』なんですけど。ここ数日の話題とも関連するので、特別にアップすることにました。後半には大切な募集もありますので、ぜひよろしく〜」

あとがき(C)

かのJ・R・R・トールキンは、大作『指輪物語』の執筆期間中に幾度か筆が止まったことがあったそうです。
特に有名な中断は、第一部『旅の仲間』の後半、主人公たち一行が霧ふり山脈の奥深くへ踏み込み、モリアの最深部にたどり着いたところ……御当人曰く「バーリンの墓の傍らに私は佇み、長らく其処に立ち止まることとなった」……でしょう。全体のおよそ三分の一ちょっと手前、これから物語がアクションで盛り上がり、驚異と不思議が怒濤の如く押し寄せ、重要な脇役たちが一気に増えようという直前です。
長い物語をこつこつ書き続けていると同じようなことは起こるもので、僕がこの『15×24』でほぼ唯一中断して迷いに迷ったのも、同じくらい書き進んだ頃――2巻の終盤で井の頭公園の包囲戦が始まる手前でした。
はたしてトウコさんはどちらへ逃げるべきか? アキホは彼女の正体に気づくべきか? ミツハシのその後の運命は? そもそも笹浦は予定時刻に間に合うのか? 少々の幸運と、そしてM編集長の掌中で飛び跳ねている自分に気づけたこともあって、僕はトールキン翁ほどに長くは迷うこともなく無事にその後を書き続けることができました。しかし、後半の山あり谷ありをクライマックスへむけて一歩づつ着実に進みながら、僕は心のどこかでこんなふうにも考え始めていたのです――
「この物語は、もしかしたら『指輪物語』と同じく三部構成なのかもしれないな……井の頭公園から吉祥寺あたりまでが三分の一、そこから第二の大ヤマまでがまた三分の一……」
(ちなみにこの「大ヤマ」というのは今まさに読者のみなさんが手にとっておられる4巻の終りから次の5巻の冒頭なのですが――)
「ということは……待てよ、これ全部で原稿用紙三〇〇〇枚を超えちゃうぞ! いったい誰が読むんだ、そんな長いライトノベル!? ていうか出版してもらえるのか、ほんとに?……いやいや、シリーズものだったらもっと長い作品はいくらでもあるぞ。落ち着け、落ち着け。でもなあ、これは一塊のお話なのだし……できれば一冊でまとめて出したいくらいなんだ。もし分冊して刊行するにしても、えーと……少なくとも五冊、多ければ七冊! せめて三分冊にしたいなあ――」
「……そもそも文庫で出すべきなんだろうか? 文庫にしても大丈夫なのか?……こんなライトノベルとは思えないようなお話……待て待て、ライトノベルらしいってどういうことだよ。面白ければ何でもあり、がライトノベルじゃなかったのか?……でもこれがライトノベルじゃないとしたら、『15×24』という代物はいったい何と呼べばいいんだ?――」
「サスペンス? アクション? ミステリ? SFとは言い難いし、しかし純然たるファンタジーというわけでもないし……青春小説を書いてるつもりはないけれど……冒険小説? スリラー? コメディの要素もあるし、ホラーと言われても否定できないし……おっと、書いてるうちに×××や××××も出てきちゃったぞ、てことは×××××小説なのか、これ?……『15×24』って、何なんだろう?」
「僕はいったい何を産み落とそうとしているんだろう?――」
 案ずるより産むが易し。
 と、昔の人は上手く言ったもので、いや増す作者の不安をよそに物語は無事に脱稿されました。二〇〇七年九月二七日午後六時、と手元のメモには記されています。余談ですが、僕が生まれたのも(日付は違いますが)同じように夕闇迫る時刻だったそうです。
 なんで書き上げてから出版までさらに二年もかかるんだよ!という賢明なる読者の皆様のツッコミにはまた後日お応えする機会もありましょうから、ここでは割愛させていただくとして――ともあれ、僕はようやく物語の結末まで無事に辿り着き、すっかり「終わったフラグ」立ちまくりでした。
「さー終わった終わった! あとは編集さんとイラストレータさんの仕事だ、こっちはたっぷり休んでやる! 読みたい本もあるし、次の長篇も短篇もあるし!」
 
教訓:一寸先は闇。
そう、そこからが大変でした!――どのような疾風怒濤に巻き込まれたのかは残りページも少ないので端折りますが、とにかく僕は、原稿を書き上げるということと本を作るということはまったく異なる(そして同じくらいに豊かで劇的な)作業なのだ、という厳粛な事実を噛みしめることになりました。言ってみれば、僕は「もういちど『15×24』を産み直す」ことになったのです。これはこれで稀有な体験だぞ、と心のどこかで楽しんでいたのも間違いないことでしたが。
そして。世界中で株価が転げ落ち、海の向こうでは初の黒人大統領が選出され、こちら側では首相がバタバタ交替しまくったあげくに与党まで交替するさまを横目で見ながら、ようやく〇九年の秋、『15×24』の第一巻は刊行されました。さあ今度こそ休むぞ、本を読むぞ!と叫んだ僕は、この時すっかり忘れていたのです。
二度あることは三度ある、という例のことわざを。――
 
   *
 
新城カズマ&愉快な仲間たちが如何にして『15×24』を三度産み落とすことになったかの顛末は次巻以降の「あとがき」に譲るとして……ここでちょっと特別なお知らせをば。
15×24』のクライマックスでは、ドラマの鍵となる「完璧な場所」への言及もしくは描写があります。その「場所」を見事先回りして言い当てた方には……最終巻クライマックスに登場/参加する権利をプレゼントしたいと思います!
といっても、これだけでは難しすぎるので、いろいろ部門を増やしてみました:
 

  1. 「完璧な場所」はここだ!部門
    • 推理の過程や理由などもお書きください
    • あなたとその「場所」との因縁や、実際に二〇〇五年大晦日〜〇六年元旦にその「場所」にいた!等の逸話があると、審査の際に有利になります
  2. 15×24』のクライマックス〜エンディングはこうだ/こうあるべきだ!部門
    • 「あのキャラとこのキャラを、ぜひカップルに!」「最終巻には、こういうイラストつけて!」「こういう番外編を書いてネットで無料公開しろ!」等のリクエストをどうぞ
    • イラストや小説や楽曲など、いわゆる二次創作があると有利になります
  3. 真犯人の正体およびその動機は?部門
    • この物語の真犯人およびその動機を解き明かしてください
    • 〈17〉が何故、自殺/心中時刻を延期したのか、その理由も推理して的中させた場合は有利になります

 
以上のいずれかを、ネットにアップしたり、ツイッターでつぶやいたり、新城カズマ宛に直接メールするなどしてください。優秀な解答者若干名は、最終巻のクライマックス等で(ちょびっとですが)描写される予定です。最終巻に「自分」を参加させたい場合は、

  • 「自分」の容姿・身長・体重・外見的特徴などの「キャラ設定」
  • 二〇〇五年大晦日〜〇六年元旦にかけての「自分」の行動ルート&理由
  • 「自分」に言わせたい一言

等を付記してください。「自分」は実在・架空を問いません。〆切は12月5日です。
 
さあ、16番目の主人公は……あなたかもしれない!
 
 
 
   10月下旬、小笠原伯爵邸にて
                         新城カズマ

X「しかし、いろいろ思いつくな、おまえ」
S「まあ、せっかくの分冊刊行なんだし、最近は基本的に『15×24』を期限付きのテーマパークというか書籍&現実の東京をプラットフォームにしたARGなんだ、と考えるようにしてますんで。あ、そういえば11月23日22日(日曜)にはARG関連の研究会にも参加します。詳しいこと確定したら、またお知らせします」
X「7日だかの早稲田の学園祭でまたおにごっこ→見つかったらサイン、てのは本当にやるのか?」
S「天気がよくて体調がよければ……それも詳しいことはツイッタとかで随時告知しますので、よろしく〜」